なぜ「CVT」は走り好きから嫌がられる? チグハグ感は過去の話!? 進化するトランスミッション「CVT」の今とは?

CVTには「ラバーバンド」と呼ばれる独特な走行感覚があった

 世の中には、数多くのトランスミッションが存在します。

 その中で、日本車の、しかも小さなクルマの多くに採用されているのが「CVT」と呼ばれるトランスミッションです。

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 CVTとはContinuously Variable Transmissionの頭文字をとった名前で、日本語的には「無段変速機」となります。

 直径を変えられる2つのプーリーにベルトを掛けた構造で、2つのプーリーの直径の違いによって変速比を、無段階に変化させることが可能です。ギヤ比をシームレスに変化させることができるので、最も効率のよいエンジン回転数で走ることが可能となります。

 小さな排気量のエンジンを効率よく使って、燃費良く走りたいという、小型車に向いたトランスミッションです。そのため軽自動車を含め小型車の多い日本では、数多く採用されることになりました。

 ところが、このCVTを「嫌いだ」と思っている人が、世の中には相当数存在しているようです。確かに個人的には、その思いは非常によく理解できます。

 なぜなら、CVTにはデメリットもあるからです。

 まず、アクセルの操作と、エンジン回転数の上昇、さらには加速力がバラバラになることがあります。マニュアルトランスミッション(MT)や、ステップATなどのように、固定されたギヤ比のトランスミッションでは、アクセルを踏み込めば、エンジン回転数が上昇し、それにあわせて加速力も増えていきます。

 ところがCVTは、アクセルを踏んでいるのに「加速しない」時間があったり、「エンジン回転数が下がってゆく」というシチュエーションがたびたび発生します。

 アクセルの踏み加減=ドライバーの欲しい加速力と、実際の加速がチグハグなことがあるのです。

 そのため古くからCVTの操作フィーリングを「ラバーバンド」と称して、毛嫌いする人がいました。というか、今でもいるでしょう。そうした人たちが、今も「アンチCVT派」としてCVTを嫌っているのです。

いまでは全日本ラリー選手権にCVT車で参戦する人もいる

 しかし、最近になって、状況は少しずつ変化しています。

 まず、一番にはCVTを使う自動車メーカー側も、そうした「アンチCVT派」の声を意識して、フィーリングに配慮するようになっています。

 ちなみに、かつてのCVTのフィーリングが悪かったのは、一番には「燃費を重視」しすぎた結果と言えます。CVTは、自在にギヤ比を変化することができますから、実のところ「燃費重視」だけでなく、「フィーリング配慮」も可能です。

 スポーツモードを用意して、そこでは効率(燃費性能)に少々目をつぶって、ギヤ比をステップATと同じように階段のように一定ごとに変化させるようにする車種も生まれています。

 また電動化の普及により、モーターアシストを実施するケースも増えています。

 最近に試乗したクルマで言えば、スバルの新型「クロストレック」や三菱自動車の新型軽自動車「デリカミニ」は、CVTにモーターアシストも実施しています。そのためアクセル操作に対して、非常にダイレクトな加速力を実現することができていました。運転中にラバーバンドと思えるような印象は一切ありませんでした。

 こうしたことが実現したのは、やはり技術の進化が大きいでしょう。レスポンス良く反応するCVTに、より燃効率を増したエンジン。そして電動化。こうした自動車メーカーの努力の結果、CVTは、かつてのラバーバンドと呼ばれた悪評を覆す性能を得るようになっているのです。

 またCVTは、使いようによっては、非常にスポーティにすることもできます。たとえば、どんな速度で走っていても、エンジンは常に最高出力をキープし続けるようにすることも可能です。

 そうした改良を施したCVTで、全日本ラリー選手権に参戦するマシンもあります。筆者はハンドルを握る機会がありましたが、その速さには、非常に驚かされました。CVT=遅いというイメージが一瞬で消えてしまったほどです。

 そうした流れの中で用意されたのが、トヨタの「GRヤリス」です。この小さなスポーツカーには、CVTを搭載する「RS」というグレードが用意されています。このCVTは、さらに発進用のギヤまで追加されており、よりスポーティな走りを実現します。

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 どんなものにも当てはまりますが、どんな技術や道具も、その良しあしは使い方次第という側面が強いもの。かつてのCVTは、燃費に大きく振っていたので、確かに走りという面では面白くないフィーリングと感じることもありました。

 でも、使い方次第では、ラリーで活躍するようにもできます。食わず嫌いにならず、もう少しCVTを冷静に判断してもよいのではないでしょうか。

2023-07-14T10:16:32Z dg43tfdfdgfd