ジープ・ラングラー アンリミテッド ルビコン4XE(4WD/8AT)/アウディQ8スポーツバック55 E-TRONクワトロSライン(4WD)/メルセデスAMG GLE63 S 4MATIC+クーペ(4WD/9AT)/キャデラック・エスカレード プラチナム(4WD/10AT)【試乗記】

ジープ・ラングラー アンリミテッド ルビコン4xe(4WD/8AT)/アウディQ8スポーツバック55 e-tronクワトロSライン(4WD)/メルセデスAMG GLE63 S 4MATIC+クーペ(4WD/9AT)/キャデラック・エスカレード プラチナム(4WD/10AT)

だからSUVは面白い!

PHEVの「ジープ・ラングラー」に、電気で走る「アウディQ8 e-tron」、豪快なV8を積んだ「メルセデスAMG GLE」、巨大すぎる「キャデラック・エスカレード」。JAIAの輸入車合同試乗会で、強烈な個性が光るSUVにイッキ乗り! デカくてマッチョなその魅力に迫る。

乗れば人生が開かれる ジープ・ラングラー アンリミテッド ルビコン4xe

皆さん、コイツがなにかわかるかい? ジープ・ラングラーだって? 正解、さすがはwebCG読者だ。しかしそれだけじゃあ足りない。こいつは世界最強オフローダー、ラングラーのなかでもPHEVの「4xe」なのだ! わかるか兄弟? ワタシが受けた衝撃が。イグニッション・オン! 無音!? まじかよ! ラングラーなのに!!

「いやはや。武骨の極みのラングラーまで、エレキで走るようになるなんて。時代よのう……」

君はそんなことを思い、落胆するかもしれない。しかし安心してほしい。このクルマ、電気で(も)走るところ以外は、全然洗練されてない! 乗り心地はドッスンバッタン。段差を越えただけで大冒険だ。エンジン始動時の「ギューン」とも「ギャオー」ともつかない音もにぎやかで、ちょいとムチを入れようもんなら、まるで重機のホイールショベル。電動パワートレインとエンジンの音のマリアージュが、「ヘビーでストロングな機械を操ってるゼ」感を強烈にかき立て、居眠りしがちな記者の細胞をぷちぷちと覚醒させる。

パワートレインの制御モードはPHEVとしてはオーソドックスで、「HYBRID」「ELECTRIC」「e-SAVE」と、字面を見ればどんなものか察しがつく3種類。ELECTRICを選んでいても、トランスファーを直結四駆にブチ込めば、EV走行は解除される。また操作パネルには回生ブレーキの利きを強める「Max Regen」のスイッチもあって、これをオンにすると準ワンペダルドライブが楽しめる。制動の強さは西湘バイパス・大磯西ICの急な下りでもがっつりブレーキがかかるほどだが、停車まではしないのでご注意を。ご注意といえば、とにかく車重が重いので(2350kg)ブレーキの利きはお察しだ。くるくる回るステアリング(どんだけマッチョなパワステが付いているんだよ?)や、意外と速い中間加速に気をよくしていると、減速時に冷や汗をかくことになる。まぁ、世のクロカン野郎には釈迦(しゃか)に説法な話でしょうが。

それにしても、それにしてもこのライブ感よ! タイヤと風のノイズに、エンジンのうなり、振動、ドライブトレインのそこらじゅうでかみ合うギアの感触。五感で対話するクルマとはまさにこのこと(「味覚は?」とか聞いてくる人は嫌いです)。モニター要らずのコミュニケーション濃度だ。

ジープに触れたこともないくせに「最近のクルマは薄味で~」とかのたまう井のなかの蛙どもよ、ラングラーを買おう、ラングラーに乗ろう。さすれば道は開かれん。ライフスタイル的な意味でも、オフロード的な意味でもね。

【スペック】

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4870×1930×1855mm/ホイールベース:3010mm/車重:2350kg/駆動方式:4WD/エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ(最高出力:272PS/5250rpm、最大トルク:400N・m/3000rpm)、モーター:交流同期電動機(最高出力:145PS、最大トルク:255N・m)/トランスミッション:8段AT/ハイブリッド燃料消費率:8.6km/リッター(WLTCモード)/価格:1030万円

アウディ教に入信せよ アウディQ8スポーツバック55 e-tronクワトロSライン

「アウディQ8スポーツバックe-tron」は、アウディのハイエンドSUVクーペにして100%エレキで走る電気自動車(BEV)である。そんなクルマに先のラングラーから乗り換えたもんだから、そのギャップにはおったまげた。ちまたでは「温度差がありすぎて風邪をひく」なんてネットスラングがあるというが、それに倣えば風邪どころかキュッと心臓が逝くレベルだったわ。危ない、危ない。

このクルマのなにがスゴいって、なにもかもが洗練の極みなのだ。乗り心地は、締まっているけどしなやか。どちらかといえば「路面をなぞる系」の感覚だが、路面からの入力は、ていねいに角が削り取られている(ちなみにエアサス標準装備)。ペダル操作に対する応答も煮詰められていて、スタートダッシュこそおだやかなものの、中間加速では“タメ”や“待ち”なしにズイ、グワッとレスポンス。ブレーキは記者のニガテな踏み始めから強く利くタイプだが、それでも“利き始め”がちゃんと丸められていて、嫌な感じはしなかった。うーん。すごいぜ、アウディ。

いっぽうで気になった……というか意外だったのが、電動パワートレインの調整機能が簡素なところ。高級車って、このあたりがムダに満艦飾なイメージがあるじゃないですか。Q8スポーツバックe-tronにもドライブモードセレクターの「Audiドライブセレクト」は付いているのだけれど、例えば「クリープなし」「ワンペダルドライブなし」「パドルによる回生ブレーキの調整は保持できず(アクセル踏んだら元の強さに戻る)」……といった点は、いずれも「機能の設定なし/切り替えは不可」だった。念のためインポーターの人に聞いても「ございません」とのことだったので、記者の誤解ではないはず。過去に乗った「Q4スポーツバックe-tron」もそうだったから、BEVにおけるアウディのひとつの流儀なのだと思う。

まぁ、だからといって困ることがあったかといえば、そうでもない。せいぜい「駐車場とかではクリープがあったほうが便利だな」と思った程度で、その辺はやっぱり、アウディのエンジニアが考え抜いた結果のコレだからだろう。完全・完璧な調律の前に、変なカスタマイズは無用。高級レストランの白いテーブルには、味変用のラー油やおろしにんにくは置かれていないでしょ? そういうことよ。

運転中にいろいろとイジるのが好きで、そもそも「クルマに乗ったらとにかく試す」を活計(たっき)としている記者としては、確かにちょっと物足りない。しかし、ムダな試行を放棄し、アウディさまに身をゆだねてしまったときのキモチよさも、想像に難くないのである。受け入れよ。さすれば道は開かれん。ああ~。

【スペック】

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4915×1935×1620mm/ホイールベース:2930mm/車重:2600kg/駆動方式:4WD/モーター:非同期式モーター(システム最高出力:408PS、システム最大トルク:664N・m)/一充電走行距離:501km(WLTCモード)/交流電力量消費率:239Wh/km(WLTCモード)/価格:1317万円

人生、パンだけじゃ味気ないでしょ? メルセデスAMG GLE63 S 4MATIC+クーペ

アウディであまりに正しい自動車体験に感嘆した記者であるが、クルマを降りると、早くもドス黒い欲望が湧き上がってきた。健康に悪いものが食べたい。アブラとにんにくがバチバチにキマった、エコロジストどもが思わず目を背けるようなブツを……。

ゾンビのような足取りで向かった先は、メルセデス・ベンツの配車場。乗ったるは「メルセデスAMG GLE63 S 4MATIC+クーペ」である。こいつのナニがすごいのか? ブイハチを積んでいるのだ。それもただのブイハチではない。最高出力612PS、最大トルク850N・mを発生する、4リッターV8ツインターボだ。……ついでにISGなんて邪魔者も付いているようだが、見なかったことにする。

いざイグニッション・オン。2.5tの巨体をくすぐる強心臓の存在感がたまらん。やっぱりクルマは、エンジンはこうでねえと! 西湘バイパスを法定速度で流していても、その威光は隠しきれない。なにせドライブモードが「コンフォート」の状態でも、マフラーが発する「コオオ~」という音がタダ者ではないのだ。静かなのに、いかにもハイチューンなV8といった趣。低負荷状態では気筒休止機能が働くはずなんだけど、耳の悪い記者には変化は聞き取れなかった。

ドライブフィールはまさに「男のクルマ」……なんつったらフェミニストにボコられそうだが、個人的にこれより好適な表現がないもんだから仕方ない。重いステアリングは“戻り”も強く、乗り心地もスポーツセダンのごとし。しなやかなのに硬質。快適だけど芯がある。左のペダルをちょいと踏めば、オプションのカーボンセラミックブレーキ(フロント)が、ぐいん! とクルマのスピードを削(そ)ぐ。

こんな機会はめったにないので、禁断の「レース」モードを……と思ったのだが、ここは公道(それも下道)なので「スポーツ+」モードでがまん。たちまちサウンドが不穏になり、「グロロロ」と獣がうなるような音に変わる。そこからアクセルをズドンと踏んだら、キックダウンからドトウの加速だ。BEVなどと違って、蹴り出されるまでにわずかなラグはあるが、それがいい。「来るぞ、来るぞ」という恐怖と緊張。うーん、たまりませんな。世のBEV諸君、これが様式美というものだ。覚えておきたまえ。

一事が万事こんな感じで、メルセデスAMG GLE63 S 4MATIC+クーペは、前時代的欲望をがっつり満たしてくれる魅惑の一杯……じゃなくて一台だった。こういうモデルのリポートだと「乗れるのは今のうちだから……」みたいなオチがつきがちだけど、記者は意外と、しぶとく生き延びるんじゃないかと思う。なにせほら、言うじゃないですか。「人はパンのみにて生きるにあらず」。わかるでしょ? 肉と酒も持ってこいってことですよ。

【スペック】

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4960×2020×1715mm/ホイールベース:2935mm/車重:2460kg/駆動方式:4WD/エンジン:4リッターV8 DOHC 32バルブ ターボ(最高出力:612PS/5750-6500rpm、最大トルク:850N・m/2500-4500rpm)/モーター:交流同期電動機(最高出力:21PS/900rpm、最大トルク:250N・m/500rpm)/トランスミッション:9段AT/燃費:--km/リッター/価格:2420万円

このクルマじゃなきゃダメなのよ キャデラック・エスカレード プラチナム

いまさら言うまでもないことだが、記者はキャデラック・エスカレードが大好きである。巨大にして雄渾(ゆうこん)。スバラシイ。ちょいと過去を調べてみたら、JAIAで、インポーター主催の試乗会で、はたまた特集(参照)の取材で、毎年必ず乗っているではないか。どうやら記者は、年に一度はエスカレードを摂取しないと手の震えが止まらない体になってしまったようだ。

マジメなリポートは過去の記事に任せたい。当代随一のモータージャーナリストが何度も批評をしたためているし(その1、その2、その3)、なんならワタシも書いている(恥)。見どころは不変だ。遠慮のないその巨体と、しっかりと重さ・デカさを感じさせるライドフィール、そして6.2リッターV8 OHVエンジン「L87」である。「シボレー・コルベット」の「LT2」に、さよなら間近の「カマロ」の「LT1」と、GMには依然としてこの形式のエンジンがあるが、記者の少ない経験に照らすと、そのなかでいちばん浅学(=ワタクシ)の思う“アメ車っぽさ”を感じさせてくれるのは、エスカレードのものだ。旧車のようにわかりやすい不整脈はないけれど、大量の空気を吸って吐き出す存在感、スロットルを開けたときの、重厚に回転を積み上げていく感覚がたまらない。

運転は大変だ。なにせデカイ。狭いところでは気を使うし、乱暴に運転してたらリニアに車体がついてこない。リジッドアクスル時代と比べれば格段に進化したが、気配りは大切である。だからこそクルマと対話し、“クルマなり”に運転する充足感がある。独断と偏見だけど、今日びは容易に言うことを聞かないクロカンやエスカレードのほうが、そこいらのスポーツカーよりよっぽど運転体験が濃ゆいんじゃないかと思う。

乗り心地も独特である。ワサワサ、ユサユサ、ときにドスン、バタンとする上屋の動きを毛嫌いする人もいるだろうが、慣れてくるとこれがイイのだし、なにより強じんなラダーフレームの“守られ感”が代えがたい。それにである。米国出張に飛ばされると(ワタシ英語しゃべれないのに)、ときに送迎でエスカレードや姉妹車の「GMCユーコン」が来てくれるのだが、不愛想なコンクリの舗装路や「これ幹線道路!?」と見まがう悪路では、その乗り味が快適至極なのだ。一度だけおなじキャデラックの「CT6」も味わったが、車内でのくつろぎ感は段違いだった。ごめんねCT6。

グローバル化だなんだといって、クルマの個性が軒並み削がれていくなかで、アメ車(と一部のイギリス車)は個人的に最後の砦(とりで)だ。そのなかでも白眉(はくび)なのがエスカレードで、デカさもエンジンもその乗り味も、すべてが郷土に立脚している。だからこそ、毎年JAIAの会場で会うたびに、記者は背筋が伸びるのである。

【スペック】

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5400×2065×1930mm/ホイールベース:3060mm/車重:2740kg/駆動方式:4WD/エンジン:6.2リッターV8 OHV 16バルブ(最高出力:416PS/5800rpm、最大トルク:624N・m/4000rpm)/トランスミッション:10段AT/燃費:--km/リッター/価格:1740万円

(文=webCG堀田剛資<webCG”Happy”Hotta>/写真=田村 弥、峰 昌宏/編集=堀田剛資)

2024-03-11T22:09:42Z dg43tfdfdgfd