クルマ購入者は必読? 元ディーラーがこっそり教える「メーカーオプション」「ディーラーオプション」の光と影とは

オプションの違い

 新車を買う際には、買いたいクルマのグレードに加えて、オプションの選択もある。

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 オプションには、

・メーカーオプション

・ディーラーオプション

の2種類があり、それぞれにメリット・デメリットがある。本稿では、これらについてクルマを買う側と売る側の立場から解説する。まずは両者の明確な違いから見ていこう。

 まず、メーカーオプションとは、クルマを生産するメーカー(工場)が製造過程で装着するオプションを指す。例えば、

・サンルーフ

・電動ドア(スライドドア、バックドア)

・ヘッドライト

・ボディカラー

などである。基本的にメーカーオプションの大半は、クルマが完成してから装着するのは難しく、クルマを発注する段階で決めなければならない。

 一方、ディーラーオプションはメーカーオプションとは逆で、クルマが完成してから取り付けるオプションを指す。例えば、フロアマット、サイドバイザー、エアロパーツ、ETCなどだ。基本的に脱着が簡単でカスタマイズ性が高い。取り付けはディーラーが行う。名前はディーラーによって異なり、「販売店オプション」と呼ばれることもある。

メーカーオプションのメリデメ

 さて、概要がわかったところで、メーカーオプションのメリットとデメリットを見ていこう。ここでは、クルマを買う側と売る側でどのような視点があるのかを確認していく。

●買う側の視点

 クルマを買う側にとって、メーカーオプションを選ぶメリットはいくつもある。最大のメリットは「付加価値」である。クルマを買った後、乗り換えなどで売却する際、メーカーオプションの有無で査定額が大きく変わることがある。特に、サンルーフや電動スライドドアは加点対象になりやすい。オプションカラーも加点になりやすいが、赤や青といった奇抜な色は、追加料金を支払っていてもマイナス査定になることがあるので覚えておくと安心だ。

 隠れたメリットは、残価設定型クレジット(残クレ)でクルマを買った場合だ。残クレで設定される最終回支払額(残価)は、車両価格に残価率を乗じて算出される。メーカーオプションは取り外しができないオプションなので、車両価格に上乗せされる。つまり、メーカーオプション分は数年後に残価として評価されるため、若干ではあるが支払額が軽減されるメリットがある。

●売る側の視点

 クルマを売るディーラーにとって、メーカーオプションは正直デメリットが多い。まずは利益面。オプションを多く付ければ売上額も利益も増えるが、メーカーオプションを多く付けても粗利にはそれほど影響しない。つまり、顧客から「オプションをたくさん付けたから値引きしてくれ」といわれても、会社としてはあまり値引きできない。

 また、新車を受注した後で、顧客から「やっぱりあのオプションを付けたいんだけど……」と相談された場合、それがメーカーオプションであれば厄介である。というのも、メーカーオプション込みの状態で工場に発注しているため、発注し直さなければならないからだ。万一の場合、注文をキャンセルすることができなくなり、顧客からのクレームにつながりかねない。このようなことは、契約時に「発注後のメーカーオプションの追加や削減はできない」と説明されていても起こりうる。筆者(宇野源一、元自動車ディーラー)も経験があるが、非常に厄介である。

ディーラーオプションのメリデメ

 次に、ディーラーオプションのメリットとデメリットを見てみよう。

●買う側の視点

 買う側にとっての最大のメリットは、後から自由にクルマをカスタマイズできることだ。エアロパーツを後付けして個性を出したり、納車後にカスタマイズしたりして使い勝手をよくすることもできる。“クルマへの愛着が増す”オプションといっても過言ではないだろう。

 また、新車の値引き交渉の際の交渉材料としても使える。高価なボディコーティングを組み込んで値引き交渉すれば、納車後に同じコーティングを施すよりも実質的な支払額は安くなることが期待できる。クルマ雑誌やインターネットの口コミで高額値引きを報告しているユーザーの多くは、ディーラーオプションを多く付けて数字をたたき出している可能性が高いことを覚えておきたい。唯一のデメリットは、残クレを利用しても残価に1円も加算されないこと。これは、ディーラーオプションを追加すればするほど、支払額が増えるからである。

●売る側の視点

 ディーラーオプションは収益性の高い商品である。その最大の理由は、粗利率が車両本体よりも高いからである。筆者が勤務していた当時、車両本体の粗利率が平均15%程度であったのに対し、ディーラーオプションの粗利率は平均30%程度と高かった。

 その主な理由は、ディーラーオプションの場合、「部品代」に加えて「工賃」も利益となるという商品構造にあった。特にボディコーティングは粗利率が非常に高く、コーティング剤よりも工賃の占める割合が大きい。ディーラーの立場からすれば、工賃はすべて利益となるため、こうした商品を売る方が商業的に効率的なのである。

オプションの奥深さ

 クルマによってはメーカーオプションでもディーラーオプションでも似たようなものが選べることがある。その最たる例がカーナビだろう。

 メーカーオプションのカーナビを選択すると、ナビ機能に加えてオーディオや付帯機能が追加されることがある。しかし、その反面、デザインが古かったり、機能が最新の社外品に劣っていたりすることもある。

 ディーラーオプションの場合、メーカーオプションに比べて内装との一体感が薄かったり、機能が少なかったりする可能性がある。しかし、機能面では優れている場合もあり、一長一短といえる。

 前述したように、残クレを使うならメーカーオプション、機能性重視ならディーラーオプションや社外品を選ぶというのもひとつの考え方だ。

 一言でいえば、オプションは奥が深い。高価なクルマを買うときこそ、慎重に検討することをお勧めする。

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