テスラが「より手頃な新型モデル」の生産計画を修正 一方で「モデルY」を再び値下げ

テスラは4月19日、同社EVのなかで米国で最も売れているコンパクトSUV「モデルY」の価格を再び引き下げた。その一方で、4月23日の第1四半期決算発表では「より手頃な価格の新型モデル」の生産計画について情報を明らかにした。

「モデル2」は過去か、それとも序章か

長らく待たれている「モデル2」は、歴史のゴミ箱行きなのか、それとも、テスラの未来を象徴するものなのだろうか。

テスラの低価格EVは、しばしばアナリストによって「モデル2」と呼ばれ、目標価格は2万5000ドル(約387万円)程度と予測されている。

2024年1月にテスラが実施した2023年第4四半期決算発表の電話会議では、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が同社の「低コストEV」について、同社の未来であるかのように語り、EVの製造コストを削減し、モデル2を可能にする「将来の製造方法」について詳細に話した。

しかしロイターは2024年4月5日、「テスラが低価格EVの開発を中止した」と報じている。マスクはこの記事が「虚偽」だと述べたが、具体的な内容については明らかにしなかった。

テスラは4月23日、第1四半期決算発表のなかで、「販売台数を増やす」ことを可能にする、「より手頃な価格のモデル」について言及した。1月のアナリスト向け電話説明会では、低価格の次世代EV(世間でモデル2と呼ばれている)を2025年後半に発売する目標が表明されていたが、今回の電話説明会では、2025年の早い時期か場合によっては2024年内に新型モデルを生産開始するとマスクは述べた。ただし、製造方法を完全に刷新するという当初の計画については見送られ、現行車と同じ生産ラインで生産するという。そのため「コスト削減の達成は以前の予想より少なくなる可能性がある」と述べている。つまり、今回言及された「新型モデル」は「2万5000ドルのモデル2」とは違う可能性が高い。

なお、4月5日にマスクがXに投稿したように、テスラでは自動運転タクシーの発表も8月8日に予定しているが、そのことでマスクは低価格EVのほうを軽視しているように感じられたため、ウォール街では困惑の声も上がっていた。

アナリストがモデル2を検討「必ずしも米国市場をターゲットにしているわけではない」

「テスラがモデル2のような製品を必要とするのは、米国内よりも他の地域かもしれない」。AutoForecast Solutions LLC(オートフォーキャスト・ソリューションズ)のアナリスト、サム・フィオラニは電子メールでそう述べている。「テスラがBYDのような企業と競争したいのであれば、中国や、おそらく欧州のエントリーレベルの購買層にアピールし、販売台数を増やすために、より小型で安価なモデルが必要になるだろう」

「伝統的な自動車メーカーのなかで、北米で製造された、3万ドル(400万円後半)台のガソリンエンジン車を提供しているところは、現在ほとんどない。そのような価格帯のEVを導入することは、たとえ大きな市場があったとしても、採算が非常に厳しい」とフィオラニは付け加えた。

モデル2の発売時期に懐疑の目「テスラのコンセプトは予定通りには実現しない」

「2万5000ドルのEVを出すというテスラの約束はいつでも、あまりに良いものでありすぎて現実味がないように聞こえていた。特に、テスラの製品がスケジュール通り、あるいは約束の価格で世に出たのを、我々は見たことがないからだ」。自動車情報サイト、Edmunds(エドマンズ)のインサイト担当ディレクター、アイバン・ドルリーは、筆者宛の電子メールにそう書いた。

さらに、現在のEV需要に影響を及ぼしているもっと差し迫った問題が他に存在しており、低価格EVはその解決策にはならないかもしれない。「価格以外にも、充電インフラや金利といった問題が、EVの販売を妨げている」とドルリーは指摘した。

「EVとICE(内燃エンジン)の両市場において、より手頃な価格の選択肢が必要であるのは間違いない。しかし、現在の市場ダイナミクスでは、2万5000ドルのEVよりも、2万5000ドルのハイブリッド車のほうが消費者の心に響くというシナリオになっている」とドルリーは付け加えた。

ベストセラー車「モデルY」を再び値下げ

一方、テスラは今回、米国での「モデルY」の価格を2000ドル(約31万円)引き下げ、世界で最も人気のあるEVのひとつがさらに安価になった。

モデルYの注文ページには、モデルYのRWD(後輪駆動)タイプが4万2990ドル(約665万円)、(販売時点での)連邦税控除額7500ドル(約116万円)を差し引くと3万5490ドル(約550万円)と表示されている。

モデルYのロングレンジ・デュアルモーターAWD(全輪駆動)タイプは4万7990ドル(約744万円)、税額控除分を差し引くと4万490ドル(約627万円)。モデルYのパフォーマンスタイプは5万1490ドル(約798万円)、税額控除分を差し引くと4万3990ドル(約682万円)となっている。

現在、テスラに乗る最も安価な方法のひとつにリースがある。毎月の支払額を低く抑えられるうえ、価値下落の影響を受けないからだ。

テスラの在庫ページに掲載されている新車のモデルY後輪駆動タイプは、価格4万940ドル(約634万円)だが、リースの場合、月々の支払いは337ドル(約5万2000円)になる(2024年4月21日現在。頭金4500ドルで、契約時に支払う初期費用と税金を含む金額が7407ドルの場合)。頭金なしを選択すると、月々の支払いは523ドル(約8万1000円)に増え、契約時支払額は2625ドル(約41万円)に下がる。

人気だが、より高額のロングレンジ・デュアルモーターAWDの販売価格は4万7990ドルで、リース料は月々468ドル(約7万3000円)になる(4月21日現在。頭金は2999ドル、契約時支払額は5898ドル)。頭金なしの場合、月々の支払いは569ドル(約8万8000円)、契約時支払額は2715ドル(約42万円)となる。

RWDもAWDも、上記価格は、年間走行距離が1万マイル(約1.6万km)というリース条件のものだ。年間走行距離が1万2000マイルの場合、月々の支払額は若干増加し、1万5000マイルではさらに増加する。

コスト重視の購入者には必ずしも重要ではないが、テスラは「フルセルフドライビング(FSD)」オプションの価格を、従来の1万2000ドル(約186万円)から4000ドル引き下げ、8000ドル(約124万円)とした。こちらのサブスクリプション料金も、月額199ドル(約3万800円)から99ドル(約1万5300円)に引き下げられた。

テスラのEVでFSDを利用すれば、ほとんどの場所でドライバーの介入を最小限に抑えた自律走行ができる。現在、他の自動車メーカーが提供している自動運転オプションのほとんどは、高速道路や限られた地域での走行のみが可能となっている。

なお、テスラは4月24日、日本でもモデルYとモデル3の価格を引き下げた。値下げ幅は一律30万円で、これによってモデルY RWDは従来の563万7000円から533万7000円に、モデルY ロングレンジAWDは651万9000円から621万9000円になっている(すべて消費税込み車両本体価格)。

forbes.com 原文

2024-04-25T05:07:10Z dg43tfdfdgfd