いまどきのバイクのエンジンは「縦長」になっている!?

スーパースポーツモデルのエンジンは、縦長がトレンド?

 本格レースにも使われるスーパースポーツモデルのエンジンは、カウリングや幅の広いフレームに隠れてしまい、全体の姿を見る機会はあまりありません。しかしバイク雑誌等でニューモデルの詳細な記事を見ると、ストリップ(カウリング類を外した状態の写真)やエンジン単体の写真も掲載されていて、目にすることがあります。

カワサキ「Ninja ZX-10R」のストリップ写真

 そして最新エンジンの写真をよく見ると、昔のバイクと比べて妙に「縦長」になっていることに気付きます。もちろんエンジンには様々な形式(たとえば並列4気筒やV型4気筒など)があるので一概には言えませんが、とくにスーパースポーツモデルのエンジンは、形式に関わらず総じて縦長になっています。

「縦長」なのは、前後長を縮めた結果

【画像】「えっ…!」これが「縦長」になったいまどきのエンジンです(10枚)

 とくにスポーツ性能を競うカテゴリーのバイクの場合、排気量や馬力が同じなら、エンジンが軽量・コンパクトな方が当然車体全体を軽量・コンパクトに構成できるので有利です。各メーカーは進化の過程で様々な技術を投入し、よりコンパクトでパワフルなエンジンを開発してきました。

1973年に発売されたカワサキ「900 Super4」(通称:Z1)は、ホイールベース1490mmに対し、スイングアーム長は約500mm

 それと同時に、エンジンが「縦長」になったのはナゼでしょう?

 じつは縦長にすることが目的ではなく「前後長を縮める」ことが目的で、相対的に縦長に見えるようになったのです。

 エンジンの前後長を縮める理由は沢山ありますが、そのひとつに「スイングアームを長くできる」というメリットがあります。

 バイクはホイールベース(前輪の中心軸と、後輪の中心軸の間の距離)に対して、スイングアームの長さの比率が大きいほど「車体姿勢」が安定します。

 たとえばブレーキをかけて前下がりになったり、路面のギャップでリアサスペンションが縮んだ時も、スイングアームが長いほど、姿勢の変化が少なくなります。

カワサキ「Ninja ZX-10R」は、ホイールベース1450mmに対し、スイングアーム長は約600mm

 スポーツバイクは「良く曲がる」ことが大きな目標なので、カーブ手前の減速時や旋回時のバンク、そして立ち上がる時の加速時など「良く曲がるために最適な車体姿勢」を維持することが重要です。そのために(ホイールベースに対して)長いスイングアームが必要になります。

 そこで例として挙げると、カワサキの「Z1」と「Ninja ZX-10R」を比べたら一目瞭然。「Ninja ZX-10R」は「Z1」よりホイールベースが40mmほど短縮したにもかかわらず、スイングアームは約100mmも伸びています。

 長い時間をかけての進化とは言え、この違いは驚きです。

スイングアームを長くするための、ブレークスルー

 エンジンの前後長を大幅に縮めることができたのは、エンジンを構成する主要な「3本の軸」の配置を変えたからです。かつてのエンジンは直線的に配置することが一般的でしたが、軸を三角形に配置することで、劇的に前後長が短くなりました。その結果として「縦長」に見えるようになっています。

軸配置の概念図。灰色がクランクシャフト、橙色がトランスミッションのインプットシャフト、茶色がトランスミッションのアウトプットシャフト

 コロンブスの卵のように「な~んだ、発想の転換か」と、感じるかもしれませんが、実際に三角配置のエンジンを作るには技術的にも生産コスト的にも相応に高いハードルがあったと思われます。

 ちなみに、イタリアのドゥカティも昔のスーパースポーツモデルと現代のスーパーバイクでは、ホイールベースに対するスイングアームの割合が大幅に長くなっています。

 エンジンがV型2気筒(かつては見た目からL型と呼ばれた)からV型4気筒に変わったり、フレームやシャシーも大きく変化していますが、スポーツバイクにとってスイングアームの長さを確保することは、長年のテーマになっていることが伺えます。

 スーパースポーツモデルのエンジンが「縦長」になった(=前後長を縮めた)背景には、こんな理由があったのです。

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